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月々の給与を減らして賞与支給により社会保険料を減額

月々の給与を減らして賞与支給により社会保険料を減額することがイメージできる画像

 

年間トータルの収入を変更させずに、社会保険料を減額させる

個人事業主の方が個人事業を廃業して、法人成りをした場合には、個人オーナーから会社の社長になります。また、個人事業主の方が別会社を設立した場合も会社の社長になります。

 

個人事業主のオーナーは自分に対して給与を支給することはできませんが、会社を設立したら会社から給与(役員報酬)を支給することができます。

 

このとき、会社の社長は自分の給与を自分自身で自由に設定することができますし、事前に届出を提出すれば賞与も支給することができます。

 

そして、毎月の給与の額に対して社会保険料がかかりますが、月々の給与と賞与の支給方法により社会保険料の負担に大きな差が出ます。

 

月額の給与を低く設定して差額を賞与で支給する

法人から支給される給与(役員報酬)に対する社会保険料の額は、保険料額表により算出されます。社会保険料は、労使折半ですから、法人と個人が半分ずつ負担することになります。

 

社会保険料率は、給与支給額のおおよそ30%(折半:15%)ですので、たとえば、月々の給与が50万円の人の場合の社会保険料は、50万円×30%=約15万円(折半:約75000円)となります。

 

これを、月々の給与(報酬月額)を減額させ、差額を賞与で支給することにより、社会保険料を減額させることができます。

 

保険料額表の下記に「賞与にかかる保険料額」の記載があり、その内容は次のとおりです。

 

標準賞与額の上限は、健康保険は年間573万円となり、厚生年金保険と子ども・子育て拠出金の場合は月間150万円となります。

 

つまり、賞与で支給した場合の社会保険料は、健康保険・厚生年金保険ともに上限が定められているため、年収の多い人は、月々の給与を引き下げて、差額を賞与で支給したほうが社会保険料の負担額は減ります。

 

社長へ支給した賞与を経費として認めてもらうために

決算後に株主総会を開催します。株主総会で月々の給与の額と賞与の支給額を決定し、株主総会議事録を作成します。

 

申告後1ヶ月以内に「事前確定届出給与に関する届出書」を所轄の税務署へ提出します。届出書には、月々の給与と賞与の金額と、賞与を支給する時期と金額を記載します。

 

支給する賞与の時期や金額が届出書に記載されている時期と異なっていたり、金額が異なっている場合には、損金(経費)として認められませんので注意が必要です。

 

※税務調査では、調査対象項目となります。事前確定届出給与に関する届出書に記載されている金額と同じ金額が支給されているか?記載されている時期と同じ時期に支給されているか?必ずチェックされます。

 

社長に賞与やボーナスを支給した場合の注意点
個人の年収と会社の損益計算書の人件費に差額が生じる

個人の所得税(年収)の計算は、1月〜12月で行われます。

 

会社の事業年度は、会社ごとにそれぞれ異なりますから、月額の給与を下げた時期と賞与を支給する時期によって損益計算書に計算される人件費の額と個人の年収にズレが生じることとなります。

 

将来受け取る年金額が減少します。

月額の報酬を減らすことにより、将来受け取る年金額が減少します。月額報酬を減額前と減額後でどのくらい年金の受取額に差が出てくるのか試算しておく必要があります。

 

もっとも、将来、国民年金や厚生年金をもらえる可能性は低くなるでしょうし、受給時期が遅くなったり、受給金額が減少されたりしますから期待できませんが。


社長が賞与でもらうことでどれくらい社会保険が安くなる?

社長に賞与を支給して社会保険料を減額することがイメージできる画像

 

社長に賞与を支給する額

会社の社長は、役員ですから従業員のように手当などはなく、毎月定額の報酬が原則です。

 

また、社会保険料は、労使折半ですから、法人と個人が半分ずつ負担することになります。

 

下記の表は、月額報酬が50万円、70万円、100万円の方の月額報酬を月々5万円に減額し、年収を変えることなく差額を賞与で支給した場合に、社会保険料の負担がどれだけ少なくなるかを示したものです。

 

定期定額の給与(役員報酬)を支給した場合の社会保険
50万円の人 70万円の人 100万円の人

月々の報酬

50万円

70万円

100万円

年収

600万円

840万円

1,200万円

社会保険

179万円

250万円

358万円

 

月々を5万円にして差額を賞与で支給した場合の社会保険
50万円の人 70万円の人 100万円の人

月々の報酬

5万円

5万円

5万円

月々の報酬年間計

60万円

60万円

60万円

賞与

540万円

780万円

1,140万円

年収

600万円

840万円

1,200万円

社会保険

119万円

123万円

123万円

 

社会保険の負担軽減効果
50万円の人 70万円の人 100万円の人

社会保険負担軽減額

60万円

127万円

235万円

※社会保険料の負担は個人負担分と法人負担分を合わせたものを記載しています。


公的年金は将来もらえない?年金の世代間格差広がる厚労省試算

事前確定届出給与に関する届出書の提出と社長への賞与がイメージできる画像

 

年金は将来もらえないので自分で準備を!

 

自分の年金は自分で準備しておく

私たちは、支払った保険料に対して、生涯でいくらの年金を受け取ることができるのでしょうか?

 

納めた年金の保険料に対して、どれだけ年金の給付が受けられるか厚生労働省が世代ごとに試算した結果、世代間の格差が広がっていることが分かりました。

 

厚労省は去年公表した将来の年金の給付見通しをもとに、世代ごとに納めた年金の保険料に対して、どれだけ給付が受けられるか試算をまとめました。

 

その結果、厚生年金では「夫がサラリーマンで妻が専業主婦」のモデル世帯で、2017年70歳の人は、納めた保険料の5.2倍を受け取れる見込みであるのに対し、30歳では2.3倍にとどまりました。

 

また、国民年金では70歳の場合、納めた保険料の3.8倍を受給できる見通しに対し、40歳以下では1.5倍でした。

 

2009年に行った前回の試算に比べて、厚生年金、国民年金ともに世代間の格差が広がっています。

 

世代間格差が実質的に拡大したことがわかり、若い世代を中心に不公平感が高まりそうです。
(読売新聞より一部抜粋)

 

厚生年金の支払保険料と受取額の比較】

2015年の年齢(誕生年)

保険料支払額

受け取る額

納めた保険料に対してもらえる倍率

70歳(1945年生)

1000万円

5200万円

5.2

60歳(1955年生)

1400万円

4600万円

3.4

50歳(1965年生)

1900万円

5300万円

2.8

40歳(1975年生)

2400万円

5900万円

2.4

30歳(1985年生)

2900万円

6800万円

2.3

20歳(1995年生)

3400万円

7900万円

2.3

 

 

国民年金の支払保険料と受取額の比較】

2015年の年齢(誕生年)

保険料支払額

受け取る額

納めた保険料に対してもらえる倍率

70歳(1945年生)

400万円

1400万円

3.8

60歳(1955年生)

500万円

1200万円

2.3

50歳(1965年生)

800万円

1400万円

1.8

40歳(1975年生)

1000万円

1500万円

1.5

30歳(1985年生)

1100万円

1700万円

1.5

20歳(1995年生)

1300万円

2000万円

1.5

 

軽減された社会保険料を民間の生命保険で

世代間の格差や支払った保険料に対する受取額の倍率からもわかるように、高い年金保険料を支払っても、将来受け取る金額に期待はできません。

 

そもそも厚生年金や国民年金だけでは老後の生活資金としては足りません。

 

特に、自営業の方の国民年金は少なすぎます。そのため、各人で必ず準備をしておく必要があります。

 

個人事業主が別会社を設立して社会保険に加入するケースもありますが、個人事業を廃業して法人成りをされた方は代表取締役社長になります。代表取締役社長は、役員ですから本来賞与を支給することはできません。

 

しかし、事前確定届出給与に関する届出書を税務署に前もって提出することにより、賞与を支給することができます。

 

これを上手く活用して、月々の報酬を低めに設定しておいて差額を賞与で支給することにより、社会保険料の負担を減らすことができるわけです。

 

負担が軽減された分で、民間の生命保険会社の年金保険に加入して確実に受け取れるように準備しておく必要があります。


※節税対策は税理士選びが成否を分ける!


個人の所得税でも、会社の法人税でも、「節税対策は税理士選びが成否を分ける!」と言っても過言ではないでしょう。

決算書・申告書を作成する税理士次第で税金は大きく変わってしまいます。

会社の税務申告には、ほとんどの場合、税理士事務所に依頼していることが多いと思います。
個人の所得税確定申告は、ご自身である程度できますから、税理士に報酬を払って依頼するケースは、事業の規模によるかもしれません。

個人の所得税の節税も税理士事務所によって大きく変わります。

税理士事務所が税務署寄りの考え方なのか、そうでないのか、同業種・同規模の事業者でも依頼する税理士事務所によって、所得金額は大きく変動します。

来期は銀行から借り入れの予定がある、住宅を購入するために住宅ローンを組む、などの理由から、所得を多めに確定申告をする必要があるかもしれません。

逆に融資を受ける予定がない場合は、できるだけ節税するように心掛けるべきです。

社会保険料や消費税率の引き上げにより、社保・税金の負担は増えるばかりです。

また、税務調査対策も、税理士の対応次第で結果は大きく変わります。

所得税の確定申告や税務調査の対策は、柔軟な対応をしてくれる税理士事務所に依頼するようにしましょう。