寄付先で異なる税の還付
ふるさと納税の浸透や多発する自然災害をきっかけに、個人の間に地方自治体や公益法人などへの寄付意識が高まっています。
前年に寄付したお金は確定申告をすれば一部が返ってきます。寄付に関する所得税・住民税の基本を押さえておきましょうね。
寄付をする相手先によって受けられる控除が異なる
日本ファンドレイジング協会がまとめた「寄付白書2017」の推計によると、東日本大震災が起きた2011年に寄付総額はピークとなりましたが、2012年以降も年7千億〜8千億の水準で増え続けています。
20歳〜79歳に占める寄付者の比率は2016年で約45%です。半数近くの個人が何らかの団体や法人に金銭の寄付をしている、ということになります。
国は個人の寄付に伴う税制優遇を拡充しています。所得税の寄付控除を受けるには、もともと1万円以上の寄付が必要でしたが、2006年に5千円、2010年に2千円に下げました。
「ふるさと納税」を広げるのが狙いです。
寄付による税控除は、所得税と個人住民税の両方を考える必要がありますが、実は寄付先によって受けられる控除が異なります。
特に注意が必要なのが公益社団法人や私立学校法人の一部、認定NPO法人などへの寄付です。所得税の控除を受ける際に「所得控除」か「税額控除」を選択することができます。
寄付先により税控除の範囲は異なる
寄付先 | 所得税 | 個人住民税 |
---|---|---|
国 | 所得控除のみ | 控除なし |
地方自治体 | 所得控除のみ |
控除あり |
公益社団法人 |
所得控除か税額控除を選択 | 都道府県・市区町村が条例で指定すれば控除できる |
寄付控除の計算と申告書の記載
母校の高校の校舎建て替えに10万円を寄付して、4万円弱の税金が還付された方(Aさん)がいらっしゃいます。Aさんは、税額控除を選択したところ、所得控除よりも約7千円多く税金が還付されました。
税額控除の計算方法は、寄付額から2千円を引いた金額に40%を掛けた金額です。課税所得が4000万円超(所得税率45.945%)の高所得者や寄付金額100万円超などを除けば、税額控除を選択したほうが税負担を減らすことができます。
国税庁の電子申告システム「e-Tax」であれば有利な控除方法が自動的に選ばれて、確定申告書に入力されます。
自ら手書きで確定申告書を作成するのであれば、第一表で所得控除は「寄付金控除」、税額控除は「政党等寄付金等特別控除」の欄に金額を記載します。
個人住民税の控除についても、確認しおきましょう。
寄付先が国や政党の場合は個人住民税の控除はありませんが、ふるさと納税はもちろん、都道府県や市区町村が条例で指定している団体や法人への寄付であれば控除が受けられる可能性があります。
都道府県が条例で指定した団体なら寄付金から2千円を引いた金額の原則4%、市区町村指定なら同6%がそれぞれ控除されます。双方の指定があれば10%控除となります。
条例で指定された団体や法人については各自治体で確認できます。
認定NPO法人であれば、ウェブサイトに記載がある場合が多く、例えば東京都には約300の認定団体があります。市区町村は独自に認定している場合が多いです。
ふるさと納税なら寄付金全額から2千円を差し引いた全額(所得によって上限あり)が所得税、住民税から差し引かれます。
また、ふるさと納税の場合、寄付先が5自治体以内であれば、「ワンストップ特例」を選択すれば、確定申告をしなくても税額控除が受けられます。
ふるさと納税以外の寄付については確定申告が必要です。その際、住民税の控除を受けるには該当箇所に寄付金額を記入するのを忘れないようにしてください。
確定申告書の「第二表」にある「住民税に関する事項」の中の寄付金税額控除の欄を記載するようにしましょう。
確定申告をするには寄付先が発行する寄付の受領書を用意し、申告書に記載したら原本を添付して税務署に提出します。電子申告であれば提出は不要ですが、税務署に確認を求められた場合に備えて5年間は手元に保管する必要があります。
⇒ふるさと納税の上限度額は?住民税も節税※確定申告書の記載方法