身近な医療費控除を漏れなく把握
ハードルが低めの医療費控除を受けるために
医療費控除というのは、1年間に支払った医療費が一定額以上だった場合に、かかった医療費の一部を所得金額から控除できるというものです。
簡単に言えば、年間10万円以上の医療費を支払っていれば、若干の税金が戻ってくる、という制度です。
医療費の領収書さえ残しておけば、誰でも医療費控除の申告をすることができます。したがって、控除を受けようと思えば、今日からでもはじめることができます。
医療費控除の対象となる医療費というのは、病院に支払った治療費、入院費などだけでなく、通院にかかった交通費、ドラッグストアで買った市販薬、場合によってはビタミン剤、栄養ドリンク、マッサージ費用なども含まれます。
また、禁煙治療やED治療などの費用も医療費控除の対象になります。
これらをうまく利用すれば、わりと簡単に医療費が年間10万円以上くらいになるはずです。
@病気やケガで病院に支払った診療代や歯の治療代
A治療薬の購入費
B入院や通院のための交通費
Cあん摩マッサージ指圧師、はり師などによる施術費
D保健師や看護師、または特に依頼した人に支払う療養の世話の費用
E助産師による分娩の介助料
F介護保険制度を利用し、指定介護老人福祉施設においてサービスを受けたことにより支払った金額のうちの2分の1相当額や、一定の在宅サービスを受けたことによる自己負担額に相当する金額
医療費控除の計算
医療費控除の計算は次のように行います。
その年に支払った医療費(保険金等で戻ってきた金額を除く)−10万円=医療費控除額
たとえば、所得600万円の人が支払った年間の医療費が30万円とします。この人の所得の5%は30万円です。
30万円と10万円を比較すれば、10万円のほうが少ないので、10万円を計算式に残します。よって、この人の医療費控除の計算は次のようになります。
その年に支払った医療費30万円−10万円=医療費控除額20万円
課税対象となる所得から、この20万円を差し引くことができます。この20万円に税率を掛けた分の税金が減額されることになり、この人の場合だと、所得税、住民税合わせてだいたい3万円〜4万円が減額されます。
市販薬も医療費控除の対象に!
市販薬で医療費控除の対象となるものとならないもの
医療費控除というと、病院にかかった費用のことばかりが思い浮かぶかもしれません。あまり知られていませんが、市販薬も医療費控除の対象になります。
医療費控除の額を増やそうと思ったときに、まず重要なポイントとなるのが市販薬です。
病院に行かない人でも、市販薬というのはけっこう購入しているものです。健康な人でも、カゼ薬、目薬、湿布などは日常的に買っているのではないでしょうか?
この市販薬の分を加算できれば、医療費控除の範囲はかなり広がります。
ただし、市販薬は、医療費の控除となるケースとならないケースがあります。それを分けるものは何なのかというと、簡単にいえば、「治療に関するものかどうか」ということになります。
「治療に関するもの」とはどういうことかというと、ケガや病気をしたり、体の具合が悪いときに、それを「治す」ために買ったものであれば、医療費控除の対象になる、ということです。
よって、医師の処方箋のない市販薬でも大丈夫です。一方、「治療に関しないもの」というのは、予防のために買った薬や置き薬として買ったものです。
つまり、具体的な病気、ケガの症状があって、それを治すために買った場合であればOK、そうでない場合はNGということです。
市販薬を買ったときどう判断すればよい?
実際のところ、予防か治療かというのは、あいまいな部分があります。
たとえば、「ちょっとカゼ気味だなぁ、薬でも飲んでおくか」となって市販薬を購入した場合、これは予防なのか、治療なのか判別は難しいと思います。
こういうときは、どう判断すればいいのでしょうか?自分が治療だと思えば治療ですし、予防だと思えば予防ということになります。
日本の税制は、申告納税制度を採用しているわけですから、これは納税者が自分で税金を申告し、自分で納める制度です。この申告納税制度のもとでは、納税者が申告した内容について、明らかな間違いがなければ、申告をそのまま認めることになっています。
したがって、医療費控除の場合も、本人が治療のためと思って購入した市販薬について、税務当局が「それは治療ではなく予防のためのものだ」ということを証明できない限りは、治療のために購入したとして認めらるわけです。
@医師等に対する謝礼
A健康診断や美容整形の費用
B予防や健康増進のための健康食品、栄養ドリンク剤などの購入費
C近視や遠視矯正のためのメガネや補聴器等の購入費
Dお見舞いのための交通費やガソリン代
ビタミン剤や栄養ドリンクは医療費控除?
条件をクリアすれば、ビタミン剤や栄養ドリンクも医療費控除の対象に
ビタミン剤や栄養ドリンクも、一定の条件を満たしていれば医療費控除の対象になります。ビタミン剤や栄養ドリンクも、病気などの治療に効果がある場合があるからです。
現代人にとって、ビタミン剤や栄養ドリンクはすっかり生活の中に溶け込んでいます。これを医療費に含めることができれば、医療費控除の額はかなりアップするはずです。
よって、ドラッグストアで栄養ドリンクなどを買った際には、忘れずに領収書をもらうようにしましょう。ビタミン剤や栄養ドリンクなどを医療費控除に含めるには一定の条件が必要です。
@何らかの体の不具合症状を改善するためのものであること
A医薬品であること
これは、市販薬とほぼ同じで、予防のためや漠然と健康のために買ったものはダメということです。どこか具合が悪いところがあって、それを改善するために飲む、というのが原則です。
なお、市販薬と同じように医師の処方箋などは必要ありません。
ビタミン剤や栄養ドリンクは医薬品を選ぶ
ただし、これも基準があいまいです。「予防、健康増進」と「症状の改善」の間には、明確な線引きはありません。
自分でどこか体の具合が悪くて飲んだ、という判断をしていれば、それは症状の改善としてOKということになります。
気を付けなくてはならないのが、ビタミン剤や栄養ドリンクは、医薬品でなくてはならない、ということです。ビタミン剤や栄養ドリンクは種類が無数にありますが、医薬品になっていないものは、医療費控除の対象にはなりません。
マッサージ代や鍼灸も要件を満たせば医療費控除
マッサージ代や鍼灸も医療費控除になる!
何かとストレス過多の現代社会です。マッサージや鍼灸などに通っている人は意外と多いです。そんな方に朗報なのが、マッサージや鍼灸などの料金も、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になるということです。
マッサージは、頻繁に受けているとお金がかかります。大体、10分で1,000円前後が相場ですので、1時間マッサージをしてもらえば6,000円くらいになります。これが医療費控除の対象になるのであれば、かなりありがたいですね。
マッサージ、鍼灸などの料金を医療費控除に含めるには、次の2つの条件を満たしておかなければいけません。
@何らかの体の不具合症状を改善するためのものであること
A公的な資格を持つ整体師、鍼灸師などの施術であること
市販薬や栄養ドリンクなどと同じように、「体はどこも悪くないけれど、とりあえずマッサージしてもらおうか、というような場合はダメということです。どこか具合が悪いところがあって、それを改善するために施術を受けることが原則です。
具合の悪いところを施術前に伝えておくこと
症状を改善するためか、単なる疲れをとるためかというのも、非常にあいまいでグレーゾーンです。「症状の改善」と「疲れをとる」の間にも明確な線引きはありません。
したがって、どこか体の具合が悪いという自覚があり、施術者にもそのことを伝えているのであればおおむねOKということになります。
また、どこの店舗で施術を受けてもいいというわけではなく、国家資格を持った整体師や鍼灸師などから受ける施術でないと控除されません。
ED治療や禁煙治療も医療費控除に
ED治療も医療費控除として認められる!
最近では、EDを病院で治療する方も多くいます。※EDとは、勃起機能障害のことで、簡単にいえば、男性がするべきことをできなくなった状態のことです。
年配の方のみならず、最近では若い方のEDが増えているそうです。実は、このED、治療にかかった費用は、医療費控除に含めることができます。
このことは、税務当局からは広報されていませんが、医療費控除に含めることができるのです。EDというと、従来の病気とは違うイメージがあるので、医療費控除には含まれないと思われる方も多いようですが、EDは、医療の見地からは病気として扱われ、治療の対象になっているものなので、医療費控除の対象になります。
※ED(イーディー)とは「勃起機能の低下」を意味し、英語で「Erectile Dysfunction」、日本語で「勃起障害」あるいは「勃起不全」と訳されます。
勃起に時間がかかったり、勃起しても途中で萎えてしまったりして、満足のいく性交ができない、と感じる人は、いずれも EDの疑いがあります。専門的には、「性交時に十分な勃起やその維持ができずに、満足な性交が行えない状態」と定義されています。
禁煙治療も医療費控除の対象になる!
ED治療と同様に、昨今では、病院で禁煙治療を受ける人が増えています。社会的に禁煙の風潮が高まっていて、やむを得ず禁煙したい、でもなかなか禁煙できない、そんな方々の最後の手段が病院での禁煙治療となっているようです。
この禁煙治療も、けっこうなお金がかかります。数万円から数十万円の出費を迫られるケースもあるようです。そして、この禁煙にかかった費用ですが、あまり知られていませんが、実は、禁煙治療にかかった費用も医療費控除の対象になります。
病院で禁煙治療をする人は、忘れずに医療費控除を申告するようにしましょう。