扶養控除の額と要件
子供や両親などを扶養している場合には、一定の金額を所得から差し引くことができます。これを扶養控除(ふようこうじょ)といいます。
扶養控除の対象となる人を扶養親族(ふようしんぞく)といいますが、扶養親族となるには、次の条件を満たしていなければなりません。
- 1.本人と生計を一にしていること
- 2.配偶者以外の親族であること
- 3.合計所得金額が38万円以下であること
- 4.青色事業専従者や事業専従者になっていないこと
扶養親族の範囲
扶養控除の対象となる扶養親族の範囲は広い
扶養控除の基本金額は48万円ですが、扶養親族の年齢や障害の有無などによって加算されます。
扶養親族は子供や両親に限らず、配偶者以外の親族であればかまいません。
親族とは、6親等内の血族と3親等内の姻族をいいますが、これらの親族を扶養していれば、扶養控除を受けることができます。
また、内縁関係にある妻との間にできた子供であっても、認知してれば親族になりますので、扶養親族になります。
なお、扶養親族の条件として同居は必要とされていません。したがって、都会の大学に通うために離れて暮らす子供はもちろん、田舎で暮らす両親に仕送りしている場合も扶養親族になります。
離婚後、別居している子供も扶養親族
離婚後、別居している子供も扶養控除の対象
離婚後に元の妻に引き取られた子供で、別居している場合であっても、生活費等を送金していれば、扶養親族になります。
ただし、子供は父親か母親のどちらか1人の扶養親族にしかなれませんので、母親の扶養親族になっている場合は、重ねて扶養控除を受けることはできません。
また、子供が福祉施設に入所していて、施設の費用を免除されているような場合であっても、小遣いや衣服などの生活費用を負担している場合には、生計を一にするものとして扶養控除の対象となります。
扶養控除を受ける人と扶養親族の収入
扶養控除は所得の多い人が受ける(※共稼ぎの夫婦は注意)
扶養控除は所得の多い人が受けたほうがおトク
夫婦ともに所得がある場合、その子供はどちらの扶養親族としてもかまいません。
通常は所得の多いほうの人の扶養親族として扶養控除を受けることになり、合理的に節税が可能となります。
誰の扶養親族とするかは毎年の確定申告のときに決めればよく、毎年同じ人の扶養親族とする必要はありません。
通常は夫のほうが所得が多いので夫の扶養親族としているケースでも、妻のほうが臨時の所得があったために所得が多くなるということもあります。このような場合には、その年についてだけ妻の扶養親族としたほうが有利となります。
扶養控除については、どのように控除を受けたらトクかを検討し、ケースバイケースで対応していくとよいでしょう。
また、扶養親族の数が多い場合には、全員を夫の扶養親族として扶養控除を受けるより、何人かを妻の扶養親族としたほうが有利な場合もあります。
たとえば、3人の子供のうち、2人を夫の扶養親族とし、1人を妻の扶養親族としたほうが有利な場合もあるでしょう。
どちらの扶養親族にしたほうがトクになるか、シミュレーションしてみて、最も有利となる組み合わせを選択すると節税になるはずです。
扶養控除を受けるための扶養親族の所得
扶養親族の収入は103万円以下に抑えよう
扶養親族となるためには、合計所得金額が38万円以下であることが条件とされます。
たとえば、子供がアルバイトをしている場合、アルバイト収入は給与所得になり、給与所得には給与所得控除が最低でも55万円あります。
したがって、アルバイト収入が103万円以下であれば、給与所得控除の55万円を差し引いて48万円。
さらに、基礎控除48万円を差し引くと所得はゼロとなり、所得金額が38万円以下となりますので、扶養控除の対象になります。
なお、子供が学生であれば、本人に勤労学生控除27万円がありますので、アルバイト収入が130万円以下なら子供本人に所得税はかかりません。
子供が学生の場合、青色事業専従者にすることはできませんが、親については青色事業専従者とすることもできます。
ただし、実際に業務に従事していない場合や遠く離れて暮らしている場合には、青色事業専従者にはなれません。
このような場合には扶養控除を受けたいところですが、年金収入が一定額以上あると扶養親族にすることもできなくなります。
そのラインは公的年金等控除額の関係から、親の年齢が65歳未満のときは年金収入が108万円以下、65歳以上のときは年金収入が158万円以下なら扶養親族となります。
扶養控除の範囲は意外と広い!
家族、親族を扶養している人が受けられる扶養控除!
この扶養控除には、知られざるウラ技がいろいろとあります。
祖父母の兄妹でも扶養になる
祖父母の兄妹でも扶養になり扶養控除
所得控除の中で、まず注目していただきたいのが、この扶養控除です。
この扶養控除というのは、世間で誤解されている点が多々あります。まず、第一に扶養の範囲です。
扶養控除に入れられる家族、親族の範囲は、実は相当に広いということです。
税法上は6親等以内の血族、もしくは3親等以内の姻族となっています。
6親等以内の血族ということは、自分の親族であれば、いとこの子供や、祖父母の兄妹でも扶養に入れることができる、ということです。
祖父母の兄妹というと、会ったことがないという人も結構いるかもしれませんね。そういう遠縁の親族でさえ、条件を満たせば扶養に入れることができるのです。
また、3親等以内の姻族というのは、妻の叔父叔母でも扶養に入れることができるということです。
妻の叔父さんといえば、冠婚葬祭くらいでしか会わないような人かもしれません。しかしながら、税法上は、そういう人も扶養に入れることができるわけです。
この範囲の広さを、まず抑えておく必要がありますね。
40歳の息子でも扶養に入れることができる
40歳の息子でも扶養に入れることができるから扶養控除
次に知っておいてもらいたいことは、扶養控除の条件はわりとユルいということです。
原則として、扶養控除は「扶養している家族」がいる人に適用されるものです。扶養していない家族(親族)を扶養に入れることはできません。
扶養控除の定義からいうと、「扶養していること」、「生計を一にしていること」が扶養控除に入れられる家族の条件となります。
しかしながら、この「扶養していること」というのは、税法上、具体的な定義がありません。
したがって、「金銭的にいくら以上援助していれば扶養していることになる」などという縛りがないのです。よって、実際に面倒を見ていれば扶養していることになります。
《例》たとえば、40歳の独身男性が実家にいるケースではどうでしょうか(親は定年しているという前提)。実家から会社に通っている人というのは、近頃は多くいると思います。
このような家庭の場合、家計は、なんとなく持っている人が出すことが多いと思います。家計を負担している独身男性は、自分の親を扶養に入れることができます。
親が無収入、あるいは一定額以下の年金しかもらっていなければ、堂々と扶養に入れてください。
《例》25歳の女性フリーターが実家在住のケースではどうでしょうか?
25歳の独身女性で、一度就職して扶養から外れています。その後、仕事を辞めてから数年間定食につかず、アルバイトをしているとしましょう。親はサラリーマンです。
この場合、その子供はまた扶養に入れることができます。いったん扶養から外れたとしても、また扶養することになれば、扶養控除の対象になります。
扶養する対象者に年齢制限はありませんし、1回扶養から外れた子供は、もう扶養に入れられない、などという規定もないのです。
養ってさえいれば、何歳であっても扶養に入れられます。たとえ40歳の息子であっても、扶養しているのであれば扶養控除に入れることができます。
同居していない親や年金をもらっている場合の扶養控除
同居していない親は扶養控除の対象になる?
同居していない親は扶養控除の対象になりますか?
そして、扶養控除の最大の誤解は、「同居している家族しか扶養控除の対象にならない」と思われている方が意外と多いということです。
「当然、一緒に住んでいないとダメでしょ??」と思っている人も多いみたいですが、実は違います。
離れて暮らしていても、一定の要件を満たしていれば扶養家族とすることができます。一定の要件というのは、「扶養していること」と「生計を一にしていること」です。
そして、これは必ずしも一緒に暮らしている必要はないのです。扶養控除には、わざわざ「同居老親」という特別枠が設けられています。
「同居老親」というのは、70歳以上の親と同居している場合は、通常の扶養控除よりも20万円上乗せの控除額(58万円)を認める、というものです。
「扶養控除では同居老親に控除額の上乗せがある」ということは、逆に言えば、別居していても扶養に入れることができる、ということです。
別居している親を自分の扶養に入れている人はいくらでもいます。それでも、税務署がそのことを指摘することはありません。
税務署員自身も、この扶養控除を最大限に活用しています。税務署員の周囲に、誰の扶養にも入っていない親族がいて、その人を自分の扶養に入れてしまっているケースはよくあることだそうです。
年金をもらっていても扶養に入れられる
年金をもらっていても扶養控除の対象に含めることができる
「扶養していること」と「生計を一にしていること」という要件には、明確な定期がありません。親に多少の援助をしていて、いざというときに面倒を見なければならない立場であれば、十分に扶養控除を受ける資格があるといえます。
もちろん、親が年金を除いて無収入で、誰の扶養にも入っていない、ということが条件になります。
親に年金収入があっても、税法上の規定で扶養に入れられる場合もあります。
公的年金受給者の場合、65歳以上の人なら、年金収入が158万円以下であれば扶養に入れることができます(65歳未満の人なら108万円以下)。
また両親のうち、どちらかが死去して遺族年金をもらっている場合、遺族年金は税法上の所得としてカウントされませんので、遺族年金はいくらもらっていても無収入ということになります。
たとえば、父親が先に亡くなって、母親は遺族年金で暮らしているというケースはよくありますが、この場合も扶養控除に入れられる可能性があるということです。
扶養親族1人あたりの扶養控除額
扶養親族 | 控除金額 |
---|---|
扶養親族(16歳以上) |
380,000円 |
特定扶養親族(19歳〜23歳) |
630,000円 |
老人扶養親族(同居老親) |
580,000円 |
老人扶養親族(その他) |
480,000円 |
抑えておきたい扶養控除と扶養親族のポイント!
扶養控除になるかどうかの判定は、扶養親族の年収、同居、仕送りなどを事前に把握しておく必要がありますね。
また、共働きの夫婦の場合など、扶養控除を受けようとする側の所得が2以上ある場合には、所得の多い側で控除を受けたほうがトクになります。
税理士に確定申告を依頼している場合には、子供がアルバイトしていること、またそのアルバイト先が源泉徴収票を市区町村に送っているかどうかも事前に把握して、税理士事務所に情報を伝えておく必要もあります。
扶養控除の範囲は意外と広く、条件もそれほど厳しくありませんから、できるだけ控除を受けるようにしましょう。