個人事業税とは?
個人事業税と法人事業税の2種類があり道府県が課税
事業税は個人事業税と法人事業税の2つに分類されます。個人事業税とは個人が営む事業に対して課される税金です。一方で法人事業税とは法人が営む事業に課される税金です。
事業税(じぎょうぜい)は、地方税法(昭和25年7月31日法律第226号)に基づき、法人の行う事業及び個人の行う一定の事業に対して、その事業の事務所又は事業所の所在する道府県が課す税金です。
個人の事業に対して課すものを個人事業税・法人の事業に対して課すものを法人事業税と呼びます。
個人事業主が所得税の計算をする上で、事業所得・不動産所得・山林所得・雑所得の計算上、事業税は必要経費への算入が認められています。
商店・飲食店・クリーンニング店・医者・弁護士など個人で事業を行っている方に対して、道府県が課税しています。
事業税は、これらの方が事業(収益活動)を行うに際して、いろいろな行政サービスを受けていることから、これらに係る行政経費の一部を負担していただくという性格をもっています。
事業税は、所得税の申告に基づいて計算されます。したがって、所得税の確定申告をしていれば、事業税については申告の必要がありませんし、所得税の節税対策をすれば、事業税の節税対策にもなります。
ただし、事業税は事業による所得にかかるものですので、所得税や住民税のような所得控除はありません。
事業税の計算方法や仕組みについては、管轄の道府県税事務所によって異なりますので、事業所のある道府県税事務所に事前に確認するようにしてくださいね。
以下、兵庫県を前提に事業税を解説いたします。
事業税の計算方法と税率
事業税の税率は業種により異なりますが、ほとんどの業種では5%となっています。
事業所得の金額から事業主控除290万円を差し引いた金額に、この税率をかけて税額が計算されます。
事業税にはこの290万円の事業主控除がありますので、事業所得の金額が290万円以下であれば事業税はかかりません。
事業税の計算方法
事業の総収入金額−事業の必要経費−※青色事業専従者給与額=所得金額
※又は事業専従者控除額
(所得金額−損失の繰越控除額−事業主控除額(年290万円))×税率=税額
事業税の税率
区分 | 事業の種類 | 税率 |
---|---|---|
第一種事業 |
物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、製造業、請負業、印刷業、出版業、写真業、旅館業、料理店業、飲食店業、遊技場業、不動産売買業、広告業、運送業、運送取扱業、倉庫業、席貸業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、サウナ風呂等の公衆浴場業、演劇興行業、遊覧所業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業、船舶ていけい場業、両替業、商品取引業、不動産貸付業、駐車場業 | 5% |
第二種事業 |
畜産業、水産業、薪炭製造業 | 4% |
第三種事業 | 医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、理容業、美容業、クリーニング業、第一種事業以外の公衆浴場業(銭湯)、印刷製版業 | 5% |
第三種事業(上記を除く) | あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業 | 3% |
不動産貸付業の事業認定基準
不動産貸付業とは、継続して不動産の貸し付けを行うものをいい、不動産所得又は事業所得のある方を課税対象としています。
ただし、次の表の認定基準に満たない規模で行われるものは課税されません。
建物or土地 | 貸し付けの態様 | 認定基準 |
---|---|---|
住宅を貸し付けている場合 | マンション、アパート、貸間等の部屋貸しをしている場合 | ※10室以上 |
住宅を貸し付けている場合 | 一戸建住宅を貸し付けている場合 | ※10棟以上 |
住宅以外の建物を貸し付けている場合 | 独立家屋以外の建物を貸し付けている場合 | ※10室以上 |
住宅以外の建物を貸し付けている場合 | 独立家屋を貸し付けている場合 | ※5棟以上 |
土地のみを貸し付けている場合 | 住宅用土地を貸し付けている場合 | 貸付契約件数が10件以上又は貸付面積が2,000平方メートル以上 |
土地のみを貸し付けている場合 | 住宅用土地以外の土地を貸し付けている場合 | 貸付契約件数が10件以上 |
※上記に掲げる基準未満の建物の貸し付けを行っている場合においても、当該建物の貸付総面積が600平方メートル以上で、かつ、貸付料収入金額(権利金及び更新料等その名目を問わず一時に収受するものを含み、共益費を除く。)が年1,000万円以上である場合
駐車場業の事業認定基準
駐車場業とは、継続して自動車の駐車のための場所の提供を行うものをいい、不動産所得又は事業所得のある方を課税対象としています。
ただし、次の表の認定基準に満たない規模で行われるものは課税されません。
貸し付けの態様 | 認定基準 |
---|---|
建築物でない駐車場(青空駐車場)を貸し付けている場合 | 収容可能台数10台以上 |
建築物である駐車場を貸し付けている場合 | 収容可能台数を問いません |
貸付不動産が共有である場合は、その持ち分で按分せず、共有物全体で認定します。
事業税の繰越控除
年間290万円の「事業主控除」に加えて、さらに「繰越控除」も適用されます。繰越控除は以下の3つから構成されています。
青色申告者で、事業所得の赤字が積み重っている場合の損失繰越(最大3年間)
白色申告者が、震災、風水害、火災などによって事業資産の損失がある場合の損失繰越(最大3年間)
事業資産を譲渡したことによって生じた損失の繰越。(青色申告者は最大3年間)
いずれも、事前に確定申告で繰越控除が発生している旨を申告している必要があります。
個人事業税の申告と納税
事業税の申告
前年1年間の事業による所得について、翌年の3月15日までに県税事務所に個人事業税の申告書を提出します。
個人事業税申告書は申請書等ダウンロードサービス(外部サイトへリンク)からダウンロードすることもできますので、事業所のある道府県のホームページで確認してみて下さい。
なお、所得税の確定申告書又は住民税の申告書を提出した人については、それに基づき、県税事務所において個人事業税の税額を計算し納税通知書を送付しますので、個人事業税の申告書を提出する必要はありません。
この場合には、所得税の確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄、又は住民税の申告書の「事業税に関する事項」欄の該当事項は必ず記載してください。
ただし、年の中途で事業を廃止した人は、廃止の日から1か月以内(死亡により事業を廃止したときは4か月以内)に道府県税事務所に申告します。
事業税の納付
道府県税事務所から送付される納税通知書により、8月と11月の2回に分けて納めます(税額が1万円以下の場合は8月に一括して納めます)。
前年の所得に基づいて計算された税額を、8月と11月の2回に分けて納付することになっています。
ちなみに、事業税の計算期間は、所得税と同じく1月1日から12月31日までです。ただし、納期は所得税と異なり、1年度遅れてやってきます。
個人事業税の納税には口座振替を利用されると便利
個人事業税の納税は、便利な口座振替がおすすめです。県税の口座振替は、納税の手間がはぶけ非常に便利です。お忙しい個人事業主の方は口座振替を利用されるようおすすめします。
個人事業税(30万円以下)はコンビニエンスストアでも納税できる
個人事業税は全国の主要なコンビニエンスストアで、休日・夜間を問わず24時間納税が可能です。
ただし、以下の納付書は、コンビニエンスストアで取り扱うことができません。県税取扱金融機関等での納付するようにしましょう。
・コンビニエンスストア収納用のバーコード印字がない、またはバーコードが読み取れない納付書
・1枚あたりの合計金額が30万円を超える納付書
・コンビニエンスストアでの取扱期限を過ぎた納付書(コンビニでの取扱期限は納付書に印字されています。)
事業税は経費!!勘定科目は?
事業税は必要経費
個人事業税は事業所得の経費になります。
よく誤解されている方がいらっしゃいますが印紙税を除くすべての税金は事業の経費とは認められないと思い込んでいる方がいらっしゃいます。
確かに所得税の確定申告で納める所得税や市区町村に納付する個人住民税は個人事業主の事業所得の経費にはなりません。
ただし、個人事業税に関しては所得税や住民税とは別の取扱で事業に関して発生した経費として認められているものですので個人事業の必要経費に算入できます。
また、不動産所得においても同様に不動産所得から発生する個人事業税は、不動産所得の必要経費に算入できます。
事業税は忘れずに必要経費に算入しましょう。
法人成りをされた方も事業税を忘れずに
個人事業主を廃業して、法人成りをした方も忘れないように注意しましょう。
12月31日で個人事業を廃業し、翌年1月から法人成りをしたとします。
個人事業税は、翌年になって納付書が送られてきます。事業税は個人事業主時代のものだから、法人の経費にならない!と思われている方がいらっしゃいますが、経費になります。
法人では必要経費という言い方ではなく、損金に算入できる、といいます。意味は全く同じことですが、個人事業主時代の個人事業税を忘れずに経費に計上するようにしましょう。
事業税の勘定科目は租税公課
個人事業主になると、「所得税」や「住民税」など様々な税金を収める必要が出てきます。しかし、これらの税金は「必要経費」にはなりません。
一方、個人事業税は数ある税金の中でも「経費扱い」にできる存在です。
個人事業税の勘定科目は「租税公課(そぜいこうか)」という費用科目です。消費税の納付も同様に「租税公課」の科目を使用します。