温泉療養で医療費控除を受ける
温泉に入って所得税を節税
医療費控除のウラ技でほとんど知られていないのが、温泉療養です。
一定の要件を満たすことができれば、温泉療養でかかった費用も医療費控除の対象になります。
温泉に入ることで、病気やケガの治療になることはよく知られていても、医療費控除まで受けられるというのは盲点ではないでしょうか?
しかも、温泉療養の場合、温泉施設の利用料だけでなく、温泉までの旅費や旅館の宿泊費なども医療費控除の対象になります。
ただし、あくまでも必要最低限の費用に限っての話ですので、高級ホテルや列車のグリーン車の料金などは認められませんし、旅館での飲食費なども対象外になります。
「ちょっと休みがとれたから温泉にでも行きたい」と思っている方は多いはずです。そういう温泉旅行も節税になるということです。もちろん、温泉旅行が無条件に医療費控除の対象になるというわけではありません。
温泉療養の場合にも、やはり一定の条件があります。その条件が以下の2つです。
@温泉療養が病気等の治療になると医師が認めた場合(医師の証明書が必要)
A厚生労働省が認定した温泉療養施設を利用した場合
温泉療養を治療として認めてもらうには、医師から証明書を出してもらわなくてはいけません。とはいっても、医師に頼めば比較的簡単に出してくれます。
医師が出した温泉療養指示書に従って、療養施設のスタッフが温泉療養をケアしてくれます。
また、厚生労働省が認めた温泉療養施設は、全国に21ヵ所あります(2017年9月時点)。
医療費控除の対象になる温泉利用型健康増進施設一覧
施設名 | 所在地 |
---|---|
豊富町ふれあいセンター(連携型施設・温泉施設) | 北海道天塩郡豊富町字温泉 |
バーデハウスふくち | 青森県三戸郡南部町大字苫米地字上根岸73-1 |
健康増進施設 はなまき | 岩手県花巻市石鳥谷町松林寺3-81-13 |
秋田県健康増進交流センターユフォーレ | 秋田県秋田市河辺三内字丸舞1-1 |
クアハウス碁点 | 山形県村山市碁点1034-7 |
ラ・フォーレ天童のぞみ | 山形県天童市大字道満197-2 |
いわき市健康・福祉プラザ | 福島県いわき市常磐湯本町上浅貝22-1 |
リステル猪苗代シーズ | 福島県耶麻郡猪苗代町川桁リステルパーク |
サンバレー・アクアヴィ-ナス | 栃木県那須郡那須町大字湯本203 |
マホロバマインズ三浦 | 神奈川県三浦市南下浦町上宮田3231 |
江の島アイランドスパ | 神奈川県藤沢市江の島2-1-6 |
クアハウス津南 | 新潟県中魚沼郡津南町大字芦ヶ崎203 |
富山県国際健康プラザ | 富山県富山市友杉151 |
クアハウス九谷 | 石川県能美市泉台町東10 |
クアハウス石和 | 山梨県笛吹市石和町八田330−5 |
クアハウスかけゆ | 長野県上田市鹿教湯温泉1293 |
神戸みなと温泉 蓮 | 兵庫県神戸市中央区新港町1-1 |
ピーアップ新宮 | 和歌山県新宮市蜂伏13-36 |
くらはし温水プール ウイングくらはし | 広島県呉市倉橋町ゴクラク550番地 |
クアハウス今治 | 愛媛県今治市湯ノ浦36 |
温泉療養文化館 御前湯(連携型施設・温泉施設) |
大分県竹田市直入町大字長湯7962-1 |
スポーツ施設利用料を医療費控除に
健康維持のためのスポーツ施設利用も医療費控除の対象
一定の要件を満たせば、温泉療養と同じように、スポーツ施設の利用料も医療費控除の対象にすることができます。スポーツ施設までの交通費や、宿泊費なども医療費控除の対象になります。
これは、「スポーツは治療の一環になる」という考え方がベースになっています。メタボリックシンドロームや生活習慣病の多くは、日ごろの運動不足が原因の1つと言われており、運動することが治療になることもあるからです。
もちろん、無条件にスポーツ施設の利用料が医療費控除の対象になるということではありません。医療費控除の対象とするためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
@高血圧症、高脂血症、糖尿病、虚血性心疾患等の疾病で、医師の運動療法処方箋にもとづいて行われるものであること
Aおおむね週1回以上の頻度で、8週間以上の期間にわたって行われるものであること
B運動療法を行うのに適した施設として、厚生労働省の指定を受けた施設(指定運動療法施設)で行われるものであること
スポーツ施設の利用を治療として認めてもらうには、医師の処方箋が必要になりますし、また、カリキュラムに従って運動しなければならない、というルールもあります。
全国に対象となる指定運動療法施設は200ヵ所以上あります。それなりの数がありますし、地域的な偏りもあまりありませんから、事前に確認しておくとよいでしょう。
医療費控除の対象となるタクシー代などの交通費
通院するために必要な交通費も医療費控除の対象
医療費控除というのは、病院に直接支払った診療費以外にも、病院までの交通費なども医療費控除の対象になります。
対象となる交通費は、「合理的な方法で交通機関を利用した場合の費用」ということになっています。
簡単に言えば、通常の経路で電車やバスを利用すれば、それらは医療費控除の対象として認められるということです。
長距離の場合には、列車や飛行機などを使っても認められます。宿泊しなければ行けないような遠方の病院では、宿泊費も医療費控除の対象となります。ですから、場合によってはタクシー代も医療費控除の対象になります。
タクシー代が医療費控除の対象になるのは、病状などから見て、タクシーを使わざるを得なかった場合です。つまり、病状が思わしくなく、緊急を要していたのでタクシーを利用ました、という場合です。
この条件を満たしていれば、病院へのタクシー代は医療費控除に参入することができます。これらの交通費も含めて計上すれば、医療費控除の額は結構大きくなるのではないでしょうか。
特に定期的に病院に通っている人は、かなり交通費がかさんでいるはずですが、交通費の場合、領収書がないケースもあります。電車料金やバス代などは、普通、領収書をもらえません。
そういう場合もあきらめる必要はありません。電車やバスを利用して交通費がかかった場合は、1回にかかる電車賃、バス賃と、病院に通った回数を集計しておいて、その数字を計上すればいいです。
税務署もそこまで細かくうるさくはいいませんので。
なお、長距離の場合は列車(新幹線など)や飛行機を使えるわけですが、グリーン車やビジネスクラスは使えません。
あくまでも、もっとも経済的で合理的な方法を選択しなければいけませんし、宿泊する場合も同様で、高級ホテルなどは医療費控除の対象とはならず、認められるのは普通のビジネスホテル程度になります。
医療費控除の対象となるか否かの判断は、グレーゾーンです。病院にタクシーで行った場合のタクシー代もその一つです。
病状から見て、電車に乗ることが困難な場合や、緊急を要する場合などタクシーで向かう必然性があれば、医療費控除の対象として認められますが、必然性がなければ認められない、ということです。
しかし、この必然性があるかどうかの判断は、客観的に見るのは難しい面があります。
病気やケガをしたときは、なるべく身体に負担をかけたくないので、タクシーを使うことも多いはずです。その場合、必然性があったかどうかは、客観的には判断しにくいわけです。
こういうあいまいなケースの場合は、自分自身で判断すればいいでしょう。「タクシーを使うことが必要な病状であった」と自分で思えば、それで大丈夫です。
日本の税制は、納税者が申告したことに対しては、原則として認められます。税務当局は、客観的に間違いを証明しない限り、納税者の申告を認めざるを得ないわけです。
確定申告で教育費や保育料にも影響が
確定申告で税金以外の保育料にも影響
税金が決まる仕組みを今一度確認しましょう。
サラリーマンの所得税は、昨年の12月の年末調整によって正しく計算されます。自治体はその結果を記した源泉徴収票のデータを基に計算した住民税を6月から天引きします。
確定申告の期間は毎年2月中旬から3月中旬までです。税金の還付を受ける還付申告は1月からです。
確定申告でよく知られるのが、上記で説明してきた医療費控除です。1月1日から12月31日までの1年間にかかった、生計を一にする家族全員の医療費を合計し、そこから高額療養費や入院給付金など、受け取った給付金の金額を差し引きます。
その金額が、原則10万円を超えた場合、その超えた分を医療費控除として申告するという制度です。
医療費控除の申告をしても、少ししか還付にならないのでやらない、という人もいるでしょう。
しかし、注意したいのは税金以外にもその影響が及ぶことを知らないと損をするかもしれません。
所得税の情報は自動的に住民税に反映され、その住民税を基に保育料の金額や高校授業料の無償化支援金の有無などが決まる仕組みになっているからです。
たとえば、医療費控除1万円の申告をした場合、30代で年収400万円(所得税率が5%)であれば還付金は500円になります。所得が高い人ほど重くなる所得税と異なり、一律10%の住民税にも反映され、1,000円安くなります。
合計で1,500円税金が軽減されることになります。「1,500円なら全然得でない!」と思われるかもしれません。
しかし、保育料は夫婦の住民税の合計で決まります。医療費控除を申告することで、前年の所得に応じて決まる市町村民税の「所得割額」が下がり、保育料の区分が1つ下がれば、毎月の保育料が安くなる可能性があります。
保育料の区分に影響する目安は医療費控除の額の6%です。手続きが面倒だからと迷うときは、その後の影響を理解したうえで、申告するかどうかを検討してみて下さい。
なお、ふるさと納税をした場合の住民税は軽減されますが、保育料の判定には影響しません。
そして、注意したいことがもう一つあります。
正社員で働いている妻が出産で産前産後・育児休業をとったときの配偶者控除と配偶者特別控除です。
一般的にフルタイムの正社員夫婦がこれらの控除を利用する機会はあまりないでしょう。
ここに落とし穴があります。
実際には産休・育休中に妻が会社から受け取る「給与収入(ボーナスを含む)」が201.6万円未満の場合、夫(給与収入1,220万円以下)は配偶者控除を受けることができます。
出産手当や育児休業給付金は給料ではなく、非課税所得のため、税金を計算する際の収入にカウントされません。
例えば、妻が昨年1月と2月分の給料を受け取り、3月から産休に入って12月まで育休を取得したとします。
妻の年収が201.6万円未満になっていれば、夫は年末調整で配偶者控除等を受けることができます。
まずは、妻の源泉徴収票を確認することが大切です。
「知らなかった!」という人もいるでしょう。
2018年より前に育児休業を取得したなら141万円以下が対象です。当時、配偶者控除等や医療費控除を使わなかったという人も5年前の分まで遡ることができます。
もちろん、配偶者控除等が適用されると住民税が安くなります。その金額によっては保育料の減額も期待できます(遡って返金されるかどうかは自治体により異なりますが)。
また、長期間仕事を休んでいる間に受け取れる傷病手当金も非課税のため、配偶者がその年に受け取った給料の額によっては配偶者控除等が使えます。
正社員夫婦は配偶者控除等が使えない、と思い込まず、賢い納税を心がけるようにしましょう。