建設業で元請に税務調査が入ったら下請業者の無申告もバレる?
Q.建設業で元請に税務調査が入ったら下請業者にも調査はあるの?
以前は、個人事業者として建設業を営んでおりました。年収1,000万円〜1,500万円以上稼ぐ時もあったのですが全く申告をしていなかった為、元請に税務調査が入った時に私の個人事業の確定申告が無申告であることが発覚してしまい、7年前まで遡って請求されました。
本税1,000万ほどと、追徴税300万ほどの納税額になりました。今現在は、個人事業を廃業して法人成りをしました。売上も順調に伸びていますが、その分外注支払いが多いため資金繰りは楽ではありません。
税務署の人と話し合いの結果、月々3万円〜5万円ずつ納付することになりました。やはり、元請に税務調査が入ったら、下請業者にも税務調査はあるのでしょうか?
A.元請への税務調査 ≠ 下請業者にも税務調査
建築業界では、元請⇒下請⇒孫請の順に、仕事を外注で支払うケースがほとんどです。自社で雇用されている社員を除き、支払う側は外注費、受け取る側は売上として仕事の受注と発注が行われ、経理処理も行われます。
元請に税務調査が入ったら、下請業者も芋づる式にヤラれるなど、よく言われますが、必ずしもそうではありません。
以下、下請を当社(自分)として解説します。
芋づる式に税務調査に入られる可能性があると考えられる場合
@元請と下請の取引規模が取引全体に占める割合のうち大口取引であること
A元請と下請が同じ税務署管轄内にある事業者であること
B元請と下請ともに、法人または個人事業主であること
元請が支払う外注費の中で、当社との取引が他の外注先に比べて金額が大きい場合、当然、税務署から見ても目立つわけですから、調査の対象先になりやすい可能性はあります。
元請の売上高が5億円、外注費が4億円あったとします。その4億円の外注費のうち、当社が3億円ぐらいを占めていれば、当社はメインの外注先になるわけですから、調査官の目にも止まりやすいということです。
逆に年間を通して数百万円しかないような少額な取引業者であれば、調査のスケジュールの中では後回しになるでしょう。
税務署には管轄があります。
国税庁のホームページで管轄の税務署を確認することができます。つまり、※同じ府内、県内であっても、市区町村ごとに管轄する地域があります。
元請業者と下請業者が同じ管轄内の事業者であれば、税務調査官は、署内で双方の取引を調べることが可能ですし、調べやすいでしょう。
逆に、元請業者に税務調査に入った調査官が、違う管轄内の下請業者に調査に行くことは不可能ですし、また、双方の取引を調べて照らし合わせることも難しくなります。
ただし、反面調査を行う際には、相手先が管轄外であっても、出向きます。そして、裏付けを取って、売上高と外注費または仕入高の金額が一致しているかどうか整合性をチェックします。
税務署では、法人課税部門、個人課税部門といった部署が設けられています。
法人課税部門は、法人を対象に調査を行います。逆に個人課税部門では、個人事業主が税務調査の対象先となります。
仮に当社の元請が法人で、その元請に税務調査があったとしても、当社が個人事業であれば、その法人課税部門の調査官は、自分に(法人課税部門)に何のメリットもない個人事業の決算申告書まで調べることはしないです。
建設業の税務調査で領収書がない場合は?
Q.外注への支払いの領収書がない場合は経費にならない?
うちに税務調査がありました。神戸市内で個人事業主で、建築関係の仕事をしています。5年前に独立をして、3年前から妻の私が帳簿は欠かさずに書いていました。
領収書などはなるべく保管するように心がけていますが、全てがある状態ではありません。うちから外注ですが、現金で支払うことがほとんどで領収書をもらえない場合がほとんどでした。
支払った外注費の金額は、ノートに月ごとに記載しています。
生活は、恥ずかしながら本当にいっぱいいっぱいで貯金もほとんどできない状態です。
しかし、売上収入は、ごまかすことなく、すべて正直に計上しています。
今、税務署に指摘されていることが「そんな金額でどうのように生活してるのですか?」と言われています。この他、帳簿の計算方法なども聞かれています。
実際に、帳簿の計算が間違っている事もありましたがそれは私の計算ミスです。
下請け業者への外注費の支払の領収書がなければ、経費として認めてくれないのでしょうか?
経費として認めてもらえずに、追加で税金を支払うのは、資金的に厳しい状況です。
これから先も、下請け業者からは領収書を書いて貰えない可能性が高いです。
その為に、帳簿を記載していても、記載する意味が無いような気がします。
本当のことを書いているのに、追加の税金が来たとしたらどうしても納得出来ませんし、支払う余裕もありません。どうすれば、追加の税金を支払わなくていいようにできるのでしょうか?
A.外注への支払いの領収書があっても現金支払はNG
個人事業主の利益=所得
ご質問にあるように、まず、業種を問わず「この所得で家族で生活できるのかどうか?」と税務署は申告内容をチェックします。
例えば、所得が360万円であれば、月平均30万になりますし、500万円の所得であれば、月約40万円ほどの生活費があるんだなと、思われます。
個人事業の場合、売上から経費を差し引いた、利益=所得ですから、あまりにも利益が少ないと所得が低いということになり、税務署から疑われやすくなります。
外注費の支払いは振込にする
次に、外注費ですが、支払いを現金支払いではなく、口座振り込みをすることが大切です。
支払=経費ですから、経費を漏れなく計上することが大切です。
支払う相手先が「現金で欲しい」と言うことも建設業界ではよくある話ですが、口座へ振り込みで支払うようにすべきです。
それでも現金で支払う場合には、請求書と領収書は必ずもらうようにしなければなりません。
税務署は、現金での支払いについては最初から疑っています。
なぜなら、普段から付き合いのある、元請・下請という関係があるのであれば、請求書や領収書は後で何度でも書き換えたり、修正を加えたりすることができるからです。
支払う相手先が無申告の個人であれば、もらう請求書と領収書の金額を多めに書くことだって考えられるからです。
仕入や外注費は経費の中で最も金額が大きくなる項目ですし、地代家賃などと違って、誤魔化されやすい科目でもあります。
疑われて経費として認められない場合には、所得が大きく変わり、税額も多額になりますので、支払いは口座振込にすべきです。
税務調査立会を税理士に依頼
最後に税務調査を納税者本人だけで受けないことです。税金のプロである税理士に立会を依頼するようにしましょう。
税理士が決算書、申告書を作成したのであれば、当然担当の税理士が税務調査に立ち会うことになります。
決算書や申告書を納税者本人が作成したものであっても、委任状を記載すれば、税理士に立ち会ってもらうことができます。
税務署と税金の交渉をすることは税理士に任せたほうが無難です。
例えば、50万円を追加で納税することになったとします。所得税が50万円なのか消費税が50万円なのか、どちが個人事業主にとって有利でしょうか?
調査官の指摘事項をすべて受け止めて、修正申告を提出するととんでもない税額になることも少なくありません。
本税の他、加算税、延滞税もかかってきます。
また、納得できないものは絶対にあきらめずに、折れないことです。納税とは納得して税を支払うことなのです。