セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制の仕組み
セルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること、と世界保健機関(WHO)が定義しています。
日頃から自分の健康状態や生活習慣に配慮して、軽度な不調はOTC医薬品で手当てするなど、自発的な健康管理を心がけようという考え方のことをいいます。
セルフメディケーション税制で賢く節税
2017年1月からスタートした「セルフメディケーション税制」について解説いたします。
1月から12月までの1年間に対象のOTC医薬品を1万2千円購入した場合、医療費控除に利用できる制度です。
軽めの症状なら病院へは行かず、市販薬で早めに手当をする。セルフメディケーション税制は、日頃から健康を自己管理する人に向けた医療費控除の特例です。
スイッチOTC医薬品(要指導医薬品および一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)といわれる特定の市販薬を購入した場合、確定申告を行うことによって所得額から控除されて、翌年度の住民税が減額されます。
制度がスタートして、2018年度初めての確定申告が行われましたが、確定申告を行った2,200万人のうち、セルフメディケーション税制の利用実績は、0.12%にあたる26,000人(国税庁調べ)でした。
日本OTC医薬品協会の調べによると、セルフメディケーション税制の認知度は65%にまで上昇しています。セルフメディケーション税制をしっかりと理解して賢く節税するようにしましょう。
市販薬のレシートは捨てないで保管する習慣をつける
通常の医療費控除は年間の医療費が世帯で10万円を超えた場合が対象ですが、セルフメディケーション税制では、スイッチOTC医薬品の年間購入額が12,000円を超えれば対象となります。
これは、月に1000円程度の支出で到達する金額です。
2018年11月19日現在で、対象となる医薬品は、1708品目と増え続けており、日頃からドラッグストアで買い物をしており、ついでに「風邪気味だから」「ちょっと頭痛がするから」と医薬品を購入するようなタイプの人は、知らず知らずのうちに、この金額を超え、条件があてはまる可能性が高いです。
まずは、1年間分の総額を算出する必要がありますので、レシートを捨てずにとっておくことが、この制度利用の一番のポイントとなります。
医療費控除の10万円を超え、スイッチOTC医薬品の購入額も12,000円を超えている場合、医療費控除とセルフメディケーション税制を同時には利用できませんので、減税額を計算して、いずれか得になる方を選択することになります。
市薬品は、医療費控除の対象にもなりますから、万が一の病気やケガに備えて、レシートを保管しておくことが大切です。
医療費控除とセルフメディケーション税制の比較
制度名 | 医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
---|---|---|
制度の有効期間 | 無し | 2017年1月1日〜2021年12月31日 |
対象期間 | その年の1月1日〜12月31日 | 同左 |
対象者 | 申告者または申告者と生計を一にする配偶者やその他の親族 | 同左 |
控除対象 |
治療費・医薬品の購入費 |
制度対象となる特定成分を含んだスイッチOTC医薬品 |
控除対象額 | 10万円を超えた部分 | 12,000円を超えた部分 |
控除対象上限額 | 200万円 | 8万8,000円 |
制度を受けるための条件 | 無し |
有り 申告時に健康診査・特定健康診査・予防接種・定期健康診断・がん検診のいずれかを受けていること |
軽減される税金 | 所得税および住民税 | 同左 |
申告のタイミング | 確定申告 |
同左 |
申告時に必要な書類 | レシートか領収書、給与所得がある場合は源泉徴収票 |
同左 健康診断の結果通知表等も必要 |
セルフメディケーション税制と確定申告
セルフメディケーション税制の利用には証明書や領収書の原本が必要
セルフメディケーション税制を利用するためには、確定申告が必要です。
確定申告の際には、健康への一定の取り組みを行っていることの証明が必要になります。そのため、健康診断等を受けたことを証明する書類(領収書や結果通知表等)の添付、給与所得者の方は、会社が発行する源泉徴収票も必要となります。
また、注意すべき点として、OTC医薬品の購入証明書(レシートや領収書)は原本が必須です。ドラッグストアで購入した場合は、レシートの対象商品にマークが付き、わかりやすく明示されています。
マーク以外の商品は、もちろん対象外で、セール品の場合はセール価格がその金額となります。インターネット通販などを利用した場合でも、販売元が作成した証明書類の原本が必要です。
納品書では代用できないため、なければ依頼して取り寄せる必要があります。
セルフメディケーション税制の利用には確定申告が必要
給与所得者の場合、確定申告の経験がなくて、ハードルが高いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。また、領収書や証明書の保管も面倒だ、と感じる方もいらっしゃるでしょう。
確定申告の方法は、最寄の税務署に直接出向くか、または、国税庁のホームページから電子申告(e-Tax)を行うことで意外と簡単にできます。
また、電子申告(e-Tax)は、2019年1月から、より手続きが簡素化されたスマート申告がスタートします。
マイナンバーカードをICカードリーダライタで読み取って申告する方法と、マイナンバーカードがなくてもID・パスワードを税務署で発行してもらい、スマートフォンやタブレット端末からでも手続きができる方法の2つの方法があります。
不安な場合は、必要書類を持って税務署の相談窓口へ行けば、アドバイスを受けることも可能です。
セルフメディケーション税制は、軽度な体の不調を市販薬などで手当てする意識を高めることが本来の目的です。
しかし、銀行等の金利の低い状態が続いて、今後さらに消費税や社会保険料が上がって家計がダメージを受けるなか、少しの手間で税金が戻ってくる、このセルフメディケーション税制の制度を賢く利用してみる価値はありますね。
セルフメディケーション税制で所得税と住民税を節税!まずはレシートの保管から
セルフメディケーション税制は、税金を納めている人であれば、会社員も経営者も自営業者も全員が対象になります。
予防医療を促進したい国にとって、医薬品を適切に活用したセルフメディケーションの意識喚起は重要な施策の1つです。
自己健康管理に取り組んだ人がレシートを保管して確定申告をするだけで所得税が還付され、住民税が安くなるという納税者へのご褒美ともいえる制度です。
まだ理解度が十分とはいえませんが、スイッチOTC医薬品は医療用医薬品から転用されたものですので効能も期待できて、さらに節税効果を考えると、ぜひもっと多くの方に活用してほしいものです。
ドラッグストアで税制対象のマークがついたレシートが不要レシート箱に捨てられているのを見ると、もったいない!です。
自分には関係ないと思わずに、買い物を1年分まとめると、結構な金額になるかもしれません。家計管理の意識を込めて、まずはレシートを保管することからはじめてみましょう。
セルフメディケーション税制のメリットとして、所得税と住民税の節税効果があります。
所得が控除されると、課税所得が下がるため、所得に応じて決定される保育料などが安くなることもあります。毎月数千円でも保育料が下がった場合、間接的なメリットも大きいと思います。
また、給与所得者の場合でも、住宅ローン控除や生命保険料控除、ふるさと納税などで確定申告を行うケースも多いと思います。
セルフメディケーション税制の申告の対象であればさらに家計へのメリットが大きくなりますが、税制は難しくてよくわからない、という方はぜひ、最寄の税務署か税理士に相談してみてくださいね。